吉村夜「アスカ ―麻雀餓狼伝―」

p.30

(お互いに牽制しあい、状況に応じて敵になれば味方にもなり、誰かが突き抜ける展開を阻止しようという明瞭な意図がひしひしと打牌から伝わってくるな。いいぞ。この緊張感はいい。僕はこういう麻雀が打ちたかったんだ!)

なんというか、思っていたよりもはるかにちゃんとした麻雀やってて驚いた。立派な麻雀ラノベである。
野性に飢えた主人公アスカくんに降り掛かる災難もひどいが、その後のアスカ君も意外と非道なのでちょっとびっくりした。BUNBUNイラストの美少年っぷりからは想像付かないアクションである。ギャンブルにはまって家の金を持ち出すダメ亭主って感じの構図で素晴らしい。せっかくラノベらしいぬるい話になったと思ったら即座に切り捨てるあたり、賭博者に相応しいやさぐれ感がある。さすが餓狼。
アリアリなのでサマありですが全自動卓時代のサマとして説得力あるし、ちゃんと特訓する。特訓は重要だ。夏休み暑い中ひたすらサマの特訓してるアスカくんは偉大だ。あと、生きていく上での金の重要さとか、人を養うことの重さなどあんまラノベで扱われないような題材がうまいこと書かれている。
ラストバトルの落ちの付け方が面白い。あと話の最後が実に麻雀小説である。
巻末に一部の麻雀用語に関する注釈があるが、麻雀知らない人が読んだらちんぷんかんぷんだと思う。「捨て牌に化粧する」とか言う表現が普通に出てくるレベル。

アスカ ―麻雀餓狼伝― (スーパーダッシュ文庫)

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