うえお久光「紫のクオリア」

ワーォ。こういう、物語のダイナミズムを両手に抱えて暴れ回ってるようなのを前触れもなく読むと、嬉しくなることだよ。300ページ超をさくっと読み終えた。文章やたら読みやすい。
最初の短編から構想したものらしいが、メインは二つめの話。高等物理とかSF的な用語やら哲学的な認識論とかが飛び交い、お話があらぬ方向にボンボン進んでいき転がっていく超インフレストーリーである。短編がジャブ(人物紹介)なら本編は雷震魔破拳(全部読めていた)。かなり高度な「どうしてこうなった」感を堪能出来る。やりすぎてしまうかもしれん‥‥って感じ。
そしてこれは、女子同士ものとして幾分に重度なものと云える。ラブラブとは、ちょっと言い難いけれども。
うえおさん短編向きなのかもしれぬ。続き物だと際限なく話が発散していく(そして、まとまらない)けど、一冊で収まる分にはとても良い。それにしても、加測くんは存在の耐えられない軽さとでも云うべき扱いである。ここまでぞんざいだと笑う。口絵イラスト必要無かったのでは。

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)